製造業必見!BESSと無停電電源装置(UPS)の使い分けと導入効果【補助金情報付】

製造業において停電対策と電力コスト削減は重要な経営課題です。BESS(バッテリーエネルギー貯蔵システム)と無停電電源装置(UPS)はそれぞれ異なる特性を持ち、用途に応じた使い分けが必要です。本記事では、両システムの技術的違いから導入効果、選定方法まで、実践的な情報を提供します。 

BESSと無停電電源装置(UPS)の違いとは?製造業での使い分けガイド

 BESSとUPSは電力バックアップという共通点がありますが、その目的と機能は大きく異なります。製造現場での最適な選択のために、まず基本的な違いを理解することが重要です。

BESSとUPSの基本的な違い|比較表で一目瞭然

BESSとUPSの最も大きな違いは、その主要な目的にあります。BESSは「配電網やその他の電気系統から電気エネルギーを受け取って貯蔵し、後に配電網へ電気エネルギーを戻せる、電気貯蔵リソース」として定義され、エネルギー管理を主目的としています。一方、UPSは瞬間的な停電から重要機器を保護することに特化しています。

BESSとUPSの違い

製造業におけるBESSの活用シーン|長時間バックアップと収益化

BESSは製造業において、単なる停電対策を超えた戦略的投資として位置づけられています。BESSは、リチウムイオン電池の先進技術を活用し再生可能エネルギー源と統合しており、エネルギーをバッテリに蓄え、必要なときに分配することで送電網の安定性を維持します。

製造業でのBESS主要活用方法

  • ピークカット: 契約電力の削減により基本料金を10-30%削減
  • エネルギー裁定取引: 夜間の安価な電力を貯蔵し、昼間のピーク時に使用
  • 長時間バックアップ: 4-8時間以上の停電にも対応可能
  • 再生可能エネルギー統合: 太陽光発電との組み合わせで電力自給率向上
  • 売電事業: 日本では政府の長期契約制度により20年間の安定収益を確保

UPSが必須となる製造現場|瞬停対策と重要設備保護

UPSは瞬間的な電力遮断から重要機器を保護する最後の砦として機能します。鉛蓄電池は150年以上にわたってエネルギー貯蔵に使用されており、低コストの堅牢性で高く評価されています。特に製造業では、わずか数秒の停電でも大きな損失につながる場合があります。

UPSが必須となる製造設備

  • 制御システム: PLC、SCADA、DCS等の産業用制御システム
  • 品質管理機器: 測定器、検査装置、分析機器
  • データサーバー: 生産管理システム、品質データベース
  • 安全システム: 緊急停止装置、監視カメラ、警報システム
  • 精密加工機: 半導体製造装置、精密金型加工機

製造業でのBESS導入効果|コスト削減と稼働率向上の実績データ 

BESSの導入により、製造業では具体的にどのような効果が得られるのか。国内外の実際の導入事例から、定量的な効果を検証します。

エネルギーコスト削減効果|10-30%の電力料金削減を実現

製造業におけるBESS導入の最大のメリットは、確実なコスト削減効果です。鉄鋼製造業の事例では、製造プロセスコストを約10%削減、年間総削減額は100万ユーロ以上を達成しています。

具体的な削減効果

  • ピークカット効果: 最大需要電力を20-30%削減
  • 電力料金削減: 年間電力コストの10-25%削減
  • デマンド料金削減: 基本料金を月額15-30%削減
  • 時間帯別料金活用: 夜間電力活用で30-40%のコスト差を活用

停電対策による生産性向上|ダウンタイム削減と品質安定化

BESSによる長時間バックアップは、製造業の生産性を大幅に向上させます。応答時間10秒以内でフル出力、稼働率99.9%以上を達成し、計画外停止による損失を最小限に抑えます。

生産性向上の実績

  • ダウンタイム削減: 年間停止時間を90%以上削減
  • 生産サイクル時間: 40%短縮の実績
  • 不良品率低減: 電力品質改善により30%減少
  • 設備稼働率: 95%から99.9%への向上

実際の導入事例|国内外の製造業での成功事例

日本国内では、関西電力の田長川蓄電所プロジェクト(99MW/396MWh)が代表的な事例です。また、TotalEnergiesは仏・ベルギー・独の複数施設で合計129MWのBESSを展開し、製造拠点全体でのエネルギー最適化を実現しています。

導入企業の特徴

  • 自動車製造業: Tesla Gigafactory(130MW独立BESS)
  • 化学工業: 24時間連続運転プロセスでの活用
  • 食品製造業: 冷凍・冷蔵設備の安定運転
  • 半導体製造: クリーンルームの無停止運転

BESS導入の検討ポイント|容量計算から設置条件まで完全解説 

BESSの導入を成功させるためには、適切な容量設計と設置条件の検討が不可欠です。製造業特有の要件を踏まえた実践的な検討方法を解説します。

必要容量の算出方法|製造業向け実践的計算例

BESSの容量計算は、用途によって異なるアプローチが必要です。基本的な電池容量計算式は「電池容量(Ah) = (負荷電流 × 運転時間) / (放電深度 × 効率)」で表されます。

製造業での容量計算例

【ピークカット用途】

必要容量 = (ピーク需要 - ベース負荷) × ピーク持続時間 / システム効率

例:2MW×4時間のピーク削減

必要容量 = (2MW × 4時間) / (0.8 × 0.9) = 11.1MWh

【停電バックアップ用途】

必要容量 = 重要負荷 × バックアップ時間 × 安全係数 / システム効率

例:500kW×8時間バックアップ

必要容量 = (500kW × 8時間 × 1.2) / 0.85 = 5.6MWh

設置場所の条件|工場での設置要件チェックリスト

BESSの設置には、適切な場所の選定が重要です。10MWh当たり0.5-1エーカーの土地面積が必要となり、既存の工場施設での設置可能性を事前に検討する必要があります。

必須設置条件

  • スペース要件: 10MWhあたり約2,000-4,000㎡
  • 基礎工事: コンクリート基礎(耐荷重200kg/㎡以上)
  • アクセス道路: 幅6m以上(コンテナ搬入用)
  • 電気設備: 高圧受電設備への近接性(100m以内推奨)
  • 安全離隔: 建物から最低3m、敷地境界から10m
  • 消防設備: 消火栓から50m以内、緊急車両アクセス確保

メンテナンス要件|長期安定運用のための保守計画

BESSの性能を長期間維持するためには、適切なメンテナンスが不可欠です。リチウムイオン電池のサイクル寿命は4,000-10,000サイクル以上ですが、適切な保守により寿命を最大化できます。

定期メンテナンス項目

  • 月次点検
    • 視覚確認(異常音、振動、発熱)
    • 温度・湿度監視
    • 電圧・電流値記録
  • 四半期保守
    • BMS(バッテリー管理システム)較正
    • 接続部トルク確認
    • 絶縁抵抗測定
  • 年次メンテナンス
    • 容量試験(放電テスト)
    • バッテリーモジュール劣化診断
    • 冷却システム性能確認
    • 消火設備動作試験

【日本】2025年最新の補助金情報|製造業向けBESS導入支援制度

 政府や自治体による手厚い支援制度により、BESS導入の初期投資負担が大幅に軽減されています。2025年度の最新補助金情報と申請のポイントを解説します。

国の補助金制度|最大50%の設備費補助

経済産業省とNEDOによる支援制度が充実しています。グリーンイノベーション基金では2兆円規模のBESSプロジェクト支援が実施され、製造業のBESS導入を強力に後押ししています。

主要補助金制度(2025年度)

  • グリーンイノベーション基金
    • 対象:10MW以上の大規模BESS
    • 補助率:建設費の最大50%
    • 上限:プロジェクトあたり50億円
  • 需要家主導型太陽光発電導入支援
    • 対象:太陽光発電+BESS
    • 補助率:設備費の1/3
    • 上限:3億円/件
  • 省エネルギー投資促進支援事業
    • 対象:工場・事業場単位での導入
    • 補助率:中小企業1/3、大企業1/4
    • 要件:省エネ率5%以上

自治体独自の支援制度|東京都・大阪府の追加補助

地方自治体も独自の支援制度を設けており、国の補助金と併用可能な場合が多くあります。特に製造業が集積する地域では、手厚い支援が受けられます。

主要自治体の支援制度

  • 東京都
    • 1MW以上のBESSに最大5,000万円
    • 中小企業は補助率2/3まで拡大
    • 申請期間:2025年4月-6月
  • 大阪府
    • 省エネ・創エネ設備導入支援
    • 補助率:1/3(上限3,000万円)
    • BCP対策加算あり(+10%)
  • 愛知県
    • 新エネルギー設備導入支援
    • 補助率:1/4(上限2,000万円)
    • 製造業優遇措置あり

申請のポイントと注意事項|採択率を高める申請戦略 

補助金申請の採択率を高めるためには、戦略的な申請準備が必要です。特に事業計画の具体性と実現可能性が重要な評価ポイントとなります。

申請成功のポイント

  1. 事前準備(申請3-6ヶ月前)
    • エネルギー使用量の詳細データ収集
    • 設置場所の事前調査完了
    • 複数メーカーからの見積取得
  2. 申請書作成のコツ
    • CO2削減効果の定量的記載
    • 投資回収計画の明確化
    • 地域貢献要素の強調
  3. よくある不採択理由
    • 費用対効果の根拠不足
    • 技術的実現性の説明不足
    • 維持管理計画の不備

今後の市場動向と技術展望|製造業が知るべき最新トレンド 

BESS市場は急速な成長を続けており、技術革新により更なる性能向上とコスト削減が見込まれています。製造業の長期戦略策定に必要な市場・技術動向を解説します。

BESS市場の成長予測|2030年までに3倍規模へ拡大 

グローバルBESS市場は驚異的な成長を続けています。2024年には史上最高の205GWhが展開され、前年比53%成長を記録し、2029年までに年率26.9%で356億ドル市場へ拡大すると予測されています。

市場成長の要因

  • 再生可能エネルギー拡大: 2030年36-38%目標(日本)
  • 電力市場改革: FIP制度による市場価格連動
  • 脱炭素政策: 2050年カーボンニュートラル目標
  • 技術進化: コスト低下と性能向上の好循環

日本市場の展望

  • 2023年:7,176億円
  • 2030年:15,000億円(予測)
  • 2035年:25,000億円(予測)
  • 年平均成長率:10.99%

次世代電池技術|全固体電池とLFPの進化 

電池技術の革新により、BESSの性能は飛躍的に向上しています。定置用蓄電市場の99%がLFP(リン酸鉄リチウム)電池となり、安全性とコストパフォーマンスが大幅に改善されています。

注目の技術動向

  • LFP電池の進化
    • エネルギー密度:200Wh/kg達成
    • サイクル寿命:10,000回以上
    • コスト:2020年比で60%削減
  • 全固体電池
    • 2025年:量産開始予定
    • 2028年:商用化本格化
    • エネルギー密度:現行の2-3倍
    • 充電時間:1/3に短縮
  • その他の革新技術
    • ナトリウムイオン電池:原材料コスト1/10
    • フロー電池:20年以上の長寿命
    • グラフェン電池:超高速充放電

製造業への影響と対応戦略|エネルギー戦略の転換期 

BESSの普及は製造業のエネルギー戦略を根本的に変革します。日本政府は今後10年間で150兆円の投資を計画しており、製造業もこの大転換期への対応が急務となっています。

製造業が取るべき戦略

  1. 短期戦略(1-2年)
    • 補助金を活用した初期導入
    • ピークカットによる即効性のあるコスト削減
    • 既存UPSとの併用によるリスク最小化
  2. 中期戦略(3-5年)
    • 再生可能エネルギーとの統合
    • VPP(仮想発電所)への参加
    • エネルギーマネジメントシステム構築
  3. 長期戦略(5-10年)
    • 完全自家消費型システムへの移行
    • カーボンニュートラル工場の実現
    • エネルギー事業への参入検討

まとめ|製造業のBESS・UPS選定と導入成功のポイント 

BESSとUPSはそれぞれ異なる強みを持ち、製造業では両システムの特性を理解した上で、適材適所の導入が成功の鍵となります。

製造業におけるBESS導入は、単なる停電対策から戦略的エネルギー投資へと進化しています。適切な容量設計、補助金活用、そして長期的なエネルギー戦略の構築により、10-30%のコスト削減と99.9%以上の稼働率向上が実現可能です。

導入成功のための5つのポイント:

  1. 用途の明確化: ピークカット、停電対策、再エネ統合の優先順位設定
  2. 適正容量の設計: 過大・過小を避けた経済的な容量計算
  3. 補助金の最大活用: 国・自治体の制度を組み合わせて初期投資を軽減
  4. 段階的導入: 小規模導入から始めて、効果を確認しながら拡大
  5. 保守体制の構築: 長期安定運用のための維持管理計画

2025年はBESS導入の絶好のタイミングです。充実した補助金制度、技術の成熟、そして明確な投資回収見込みにより、製造業の競争力強化とカーボンニュートラル実現の両立が可能となっています。

出典

https://kmecsone.jp/article/moxa-column/column_184/
https://www.energy-storage.news/japan-large-scale-battery-storage-opportunities-in-an-evolving-market/
https://www.cummins.com/jp/news/2024/08/01/what-are-battery-energy-storage-systems-bess
https://www.alvarezandmarsal.com/insights/case-study-delivering-cost-savings-across-manufacturing-process-and-purchasing-functions
https://www.edina.eu/power/battery-energy-storage-system-bess
https://pknergypower.com/difference-between-ups-and-bess/
https://www.mckinsey.com/industries/automotive-and-assembly/our-insights/enabling-renewable-energy-with-battery-energy-storage-systems
https://www.ey.com/ja_jp/insights/energy-resources/four-factors-to-guide-investment-in-battery-storage
https://www.baringa.com/en/insights/low-carbon-capital/japanese-governments-reform-to-energy-policy/
https://www.startus-insights.com/innovators-guide/solid-state-battery-news-brief/
https://www.energy-storage.news/global-bess-deployments-soared-53-in-2024/
https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/battery-energy-storage-system-market-112809494.html
https://www.aplawjapan.com/en/publications/20230217
https://green-innovation.nedo.go.jp/en/about/
https://eepower.com/technical-articles/battery-sizing-explained/
https://www.energy-storage.news/japanese-government-selects-battery-aggregators-for-jpy9-billion-subsidy-scheme/
https://www.circuitenergy.ca/blog/post/8-operational-strategies-for-enhancing-lifespan-of-lithium-ion-batteries-in-large-scale-bess-systems
https://www.linkedin.com/pulse/battery-energy-storage-system-bess-site-requirements
https://www.kimley-horn.com/news-insights/perspectives/battery-energy-storage-system-requirements/
https://en.wikipedia.org/wiki/Tesla_Megapack
https://totalenergies.com/company/projects/electricity/battery-based-energy-storage

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